この世はご報告であふれている

 今月転職をし、それに伴い長野県伊那市から東京都へと引っ越した。

ゴールデンウイークは荷物の整理や住所変更などバタバタして終わってしまった。

 

ところで今年の4月には伊那市市長選と伊那市議会議員選挙が行われた。

*1

投票に行った後、なんで投票に行ったのか考えていた。

もう引っ越すことが確定している市の選挙に行くことをどのように説明できるのか、暇だったので調べることにした。

なお以下では、投票という行為そのものをした理由と、だれに投票したのかという内容

を別個で考えることにする。

 

1.投票に行った理由

投票参加については以下の意思決定モデルを基に自分の場合と比較してみたい。

意思決定モデルについては以下を参照した。

*2

期待利得>0:投票に行く

期待利得=確率×便益+義務感-投票コスト

期待利得≦0:投票に行かない

 

私は投票に行ったので、期待利得が0より大きかったと考えられる。

確率は投票によっては当落に影響を与える可能性

便益は自分自身が投票したことによって得られるメリットである。

上記2つは私にとって非常に少ないといえる。

まず確立については伊那市の人口は66,000人ほどである。*3

私が投票しようがしまいが、選挙結果は変わる可能性は低い。

なお、市議会議選挙の当落線上の差は30票程度である。

次に、便益だがこちらもメリットは少ないといえる。

投票後5日間は伊那市民だったが、投票後5日で市政がガラッと変わるとは思えないし、実際に急変が起こることはなかった。

 

残りの項目は義務感と投票コストである。

義務感は政治に関心を持ち、投票という行動自体から満足を得られる度合

投票コストは、投票所へ行くまでの物理的コストや、候補者の取捨選別への労力を指す。

義務感は比較的高いのだと思える。会社の配属で長野にいた4年間欠かさず投票してきたことを考えると投票をしようという意識は高いのだろうといえる。

また投票コストについても今回は大きくなかった。

というのも期日前投票の場所が図書館で延滞していた本を返しに行くときに立ち寄れたからである。図書館も家から車で10分ほどで会社帰りによれる場所にあったのも大きい。

また候補者の選別という点についても、「どうせ引っ越すし」という軽い気持ちで選べたので、選別に時間を要すことはなかった。

 

まとめると、今回伊那市の選挙に行ったのは、家から近いところに投票所があり、ある意味で適当に投票できたからである。

 

2.候補者を選べた理由

 前項の通り、投票に行った理由は、義務感と投票コストの低下によるものだった。

また記載した通り、候補者の選別も比較的簡単に行うことができた。しかし、そのことは候補者の選別に労力を要さないことと同義ではない。しばしば指摘されるように、地方選挙候補者の多数は無所属であり、国政とは違う基準で選ぶ必要がある。加えて選挙期間も非常に短い。*4

それでは候補者をどのように選別したのか、以下の3つの視点から考えてみたい。*5

①支持する政党

②政策争点に関する立場

③候補者の属性

①は前述のとおり無所属での立候補が多いため期待できない。

②についても記憶の限り、若者が働きやすい街、高齢者福祉の充実などが多く、議論を二分する争点などは見当たらなかった

③も難しいところではあるが、おそらくこの点が投票先を選んだポイントだと思う。

候補者が現職であれば、今の市政に満足していれば現職に投票し、満足していなければ新人に投票すればよい。(こうした投票は業績投票行動と呼ばれる。)*6

 

まとめると、投票行動では現在の市政に満足しているかどうかで選択をしたのである。

 

3.終わりに

投票するのは簡単だが、それを説明するのは時間がかかる。

あと気になるのは、こうした適当な投票の責任はどのように考えればよいのか。

世の中はなぞにあふれていますね。

 

4.参考文献

砂原庸介、稗田健志、多湖淳『政治学の第一歩』、有斐閣、2020年

飯田健、松林哲也、大村華子『政治行動論』、有斐閣、2015年

濱本真輔『日本の国会議員』、中公新書、2022年

 

 

*1:

伊那市長選挙・伊那市議会議員一般選挙の選挙結果について:伊那市公式ホームページ

*2:砂原庸介ほか編『政治学の第一歩』78-79頁、有斐閣、2020年。

*3:

最新 伊那市の人口と世帯数(直近8か月分):伊那市公式ホームページ

*4:濱本真輔『日本の国会議員』、93-96頁。

*5:飯田健ほか著『政治行動論』103頁、有斐閣、2015年。

*6:飯田ほか著『

政治行動論』、105頁。